よく知られている中国の古事で、「画竜点睛」(がりょうてんせい)という話がありますね。
私は以前からなぜかこの話が好きなんです。その話というのは、中国の南北朝時代に張さんという絵の名人がいて、あるお寺の壁にそれは立派な龍の絵を描きまして、それを見ていた人たちが『どうして龍に目を描かないのか?』と聞いたところ、『目を描き入れたら龍はたちまち空に向かって飛び去ってしまうからだ』と画家は答えました。
人々はそんなことあるはずがないと笑って、画家に無理やり眼を描き入れさせたのです。
すると画家が言った通り、龍は目が入った途端に壁から飛び立って天に昇って行ってしまったという話です。
瞳を描き入れられて龍に魂が吹き込まれたんですね。精神を集中し渾身の思いを込めて最後の仕上げをしたら、素晴らしいものはさらに完璧なものになるということですね。
或いは、物事を中途半端に終わらせてはダメで、完結する時には気を入れて最後の仕上げをしないと何の価値もない、という教訓にも受け取られます。
私はこの話にジュエリーの存在感に一脈通じるものを感じます。
成熟した女性、具体的には40代後半以上の女性にとってジュエリーを着けることは、自分の装いやスタイルを完成させるための最後の仕上げ、Finishing touch、と言えるものではないかと思います。
成熟した年代の女性には風格が備わっています。ですから、ジュエリーのような価値のかたまり、濃い存在感に負けない素地が出来上がっているんです。それを自分の装いの仕上げにパッと取り入れる、その瞬間に龍に目が入った時のように魂が入り輝きがスパークする、そういう経験は素晴らしいものです。
essay
画竜点睛のおはなし
Written by Yunagi
LakeishaのジュエリークリエイターYunagi:夕凪は
幼いころから母親の指輪やネックレスを見ては目を見開き、宝石店には必ずついていき、ジュエリーに並々ならない愛着を寄せていましたが、
▪ジュエリーがライフワークになったのはずっと後のことで、昭和生まれの娘は父親の命令に従うことが当たり前の時代で大学は経済学部でした。
▪20代はテレビ報道部でニュースキャスターの仕事、デザイン雑誌で海外の各分野当代一のクリエイターの仕事論に迫るインタビュー記事を多数書き、また、ラジオドラマのシナリオやファッションブランドのカタログコピーを書いていました
▪30代は多くのクリエイター、アーティストのルポルタージュで培った人脈を基にデザイン企画の仕事を始め、国内外の素晴らしいアーティストや建築家と海外高級リゾートのグランドデザインの仕事を数多くやりました
▪古くから知る編集者さんに『あなたは若い時から、ずいぶんと年上の40,50歳を過ぎた女性の成熟した魅力や美しさについて語っていたね』と。それは、1970年代Yunagiがまだ十代で、最も多感で吸収力が旺盛の年頃に日比谷映画街に通い、フランス発祥のヌーベルバーグのフランス映画を、片っ端から観たことに起因しているのかもしれません。今、つくり始めたLakeishaは、情熱的に生きた時間を持ち、深い悲しみも経験し、懸命に生きてきた大人の女性の深みのある表情に似合うジュエリーです
東京、軽井沢、バンコク、チェンマイ、香港、パリ、ロンドン、ウィーンを、周遊しながらものづくりをするYunagiからの時おりのメッセージ
・・ Yunagi:夕凪はhandle name ・・Related Articles